スポーツ歯科

私は中学から大学までラグビーをしていました。その頃はスポーツ外傷という概念はなく、ケガをしてあたりまえ、ケガをすることが誇りでもありました。しかし、自分が歯を無くすとは思いもしませんでした。

大学3年の練習中、チームメートと接触、私は前歯を折り友達は頭に3針程の裂傷を負いました。その後、OBとなった私は現役相手にまたもクラッシュ!今度は前歯1本がなくなり、1本が破折、もう1本は脱臼、そして歯槽骨骨折でした。その時にマウスガードがあったなら…。

現在、私は、ラグビー指導員、学校歯科医、大阪府ラグビー協会医務委員として、そして、マウスガードの重要性を肌で知っているものとして普及に努めています。

マウスガードについて

マウスガードの役割は主に口腔領域の外傷予防です。わかりやすく言えば、歯が折れたり抜けたり、また歯による唇のケガ、ぶつかった相手に自分の歯でケガをさせない為の道具です。

マウスガードを使用することは自分だけの安全確保ではなく、同時に一緒に競技をするプレイヤーに対する配慮でもあるのです。

もし、大人が歯を失った場合、治療の選択肢は、取り外しのできる入れ歯、取り外しのできないブリッジ、骨に直接埋め込むインプラントの3つがあります。しかし子供であれば顎骨の成長途中であるためインプラントはできません。そして歯の崩出途中であればブリッジも難しく、20歳まで取り外しのできる(食後手入れの為に取り外さなければならない)入れ歯しかありません。

ですから、マウスガードは口腔領域に影響をおよぼすスポーツを楽しむ子供たちにこそ必要だと考えます。とくに小学生からの使用をおすすめします。

良いマウスガードって

マウスガードの役割については先ほど述べましたが、それではどの様なマウスガードが良いのでしょうか。外からの力を受け止める為にはある程度の厚みが必要です。しかし厚すぎると違和感がつよくなり使用しにくなりますので、デザイン(外形)を工夫します。そして噛み合わせが悪いと、顎関節に影響を与えてしまいます。

厚み

作製前のシートの厚みで表します。

小学生まで 2.0~3.0mm  中学生 2.5~3.5mm 高校生以上 3.5mm以上を目安に。

デザイン(外形)

唇側は小帯を避けて歯肉と頬の境界まで。口蓋(内)側は歯頸(歯と歯肉の境界)線上に。

また後縁は違和感が少なければ高校生以上は第2大臼歯の後まで覆ってください。慣れなければ第2大臼歯の中央、次に第1大臼歯の後、第1大臼歯中央まで順番に切り落としてください。中学生以下は一番奥の歯を覆うところまで。

噛み合わせは、軽く噛んだ時に下の前歯が軽く接触する程度に。

噛み合わせの角度はなめらかにし、下顎の運動の自由度をあげておく。

内面は歯の形がわかるほどしっかりと印記されていること。これがあまいと、外からの力に負け、はずれ易くなってしまいます。

マウスガードはどこでつくるの?

よくマウスガードはどこで作ればいいのですか?いくらぐらいかかりますか?と聞かれます。

マウスガードは外傷から歯を守るものですが、虫歯があっては意味がありません。また、マウスガードを作ってから虫歯を治すと合わなくなる場合がありますので、虫歯の治療をしてから作られるのがいいと思い、かかりつけの歯科医にご相談されるのがいいとお答えしています。値段につきましてはあまり安いと、やはり製作過程でどこか手を抜かれていると思いますし、交通費がかかれば、不具合があっても調整にも行きにくいでしょうから、やはりお近くのかかりつけの歯科医で作られることをお勧めします。

マウスガードの良しあしは、上記を参考にされてかかりつけの歯科医とご相談ください。

 

2011年7月現在、マウスガードの装着を義務づけているのは、ボクシング、アメリカンフットボール、アイスホッケーの20歳以下、ラクロスの女子、ラグビーの高校生及び中学生などがあります。高校野球においては、透明か白色のマウスガードの使用を認めていますが、私たちスポーツ歯科に取り組んでいる歯科医からすれば「子供たちが安全にスポーツを楽しむ 」という意味からいえば少し的外れだと思いますが使用禁止よりはいいかと。

そして、学校のクラブ活動における口腔外傷の多いスポーツは、野球、バスケットボール、バレーボールがあり、当然マウスガードの装着が推奨されます。その他、柔道、サッカーも推奨されまが、基本的に歯が何かにあたる危険性のあるスポーツをする子供たちには、規則に縛られず、親御さんたちがさせてあげてください。これがスポーツにかかわる歯科医のアドバイスです。